2018年02月23日

気候風土適応住宅

2020年の「省エネ基準義務化」で伝統木造住宅はどうなるか?

先日、ACCの勉強会で「伝統構法の2020年省エネ法の義務化に向けての新たな方法」
気候風土適応住宅についての勉強会に参加しました。

講師は(有)綾部工務店の代表 綾部孝司氏です。

 綾部工務店さんは埼玉県の川越市にあり、綾部孝司さんで3代目で、国産材を大工さんが手刻みし、「木組土壁の家」を基本とされている工務店さんです。また省エネ性能についても詳しく検討され、「断熱(外皮)性能だけが省エネではないのではと思い、素材の製造から廃棄までのトータルで省エネを考えないとおかしい」ということで、国交省サステナブル建築物等先導事業「気候風土適応型住宅」が採択されたそうです。

 さて、2020年の住宅の省エネ義務化で伝統的な建て方の住宅がどうなるかというと、省エネ法では建物外周部(外皮)には断熱材を施すことになっています。また外部建具も性能の高いサッシが要求されます。それらを地域ごとの基準値に納まるように計算して、断熱材の厚みや建具の性能を決めなくてはいけません。

 すると伝統的な建物では土壁の外壁では柱内に土壁がありますので、柱内には計算値通りの断熱材は入れられません。また屋根の下地を仕上げとすると(梁などが見えて垂木も表しできれいな民家を想像していただければいいのですが)断熱材は入りません。床下も石場建てであれば立上がりの基礎がないので基礎断熱などはできません。(床断熱なら可能でしょうが)建具も木製にすると厚めのペア硝子は入りにくい(不可能な訳ではないのですが)また、もともと窓が大きくて性能は不利になるなどなどがあります。

 ですから省エネ法では全国一律の形態の建物しか建たなくなるおそれがあり、伝統的な構法の建物がなくなる事は伝統的な技術の継承や文化を失う恐れもあると思われるのです。

 ではその伝統構法の住宅が住みにくいのかと言うと、実際建ててみえる綾部工務店さんのお施主様ではそんなことはないそうなんです。(川越市は夏暑く、冬は寒い地域だそうですが)反対に計算値よりも一次エネルギーの消費は少なくなっているそうなんです。

 そこで、国も「気候風土適応住宅」という認定ガイドラインを策定しました。

 しかし、各地域独自の気候風土に適した住宅ということで、それぞれの行政庁でも認定基準を作る事が必要なんですが、その行政庁での認定基準作りがまだまだ進んでいないそうです。

ただ、これは行政だけの問題ではなく、私たち実務者側からも積極的に提案する事が大切と言われます。

 伝統構法の住宅を過去の化石とはせず、未来にも繋がる伝統的文化として継承するためにも私たちからの働きかけが大切であると痛感いたしました。
posted by 川島勝久 at 18:20| Comment(0) | 学ぶ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月14日

モノ・コト

やっと時代はコープの住まいに追いついて来たのか?はたまた違うのか?

昨日はコープあいちさんの合同交流会に参加してきました。
「2018年度の住宅をめぐる情勢とその具体的対応」と題して清水英雄事務所株式会社の代表取締役の清水英雄氏の講演を聞きました。

 氏曰く「今までの営業スタイルからの脱却が必要」といわれました。

 情勢は新築着工件数は少子化により確実に減少し、空き家率の増加、既存住宅の流通というストック循環型社会への移行や、大相続時代の始まり、2020年の省エネ法の義務化による性能の差別化ができない事など、住宅単体を作って売る時代から住生活全般の相談からライフスタイル、エネルギー、資産活用等の住生活に関する新しい事業への展開が必要であると言われます。

 ハウスメーカーではすでに建物の性能による差別化からライフスタイル提案型に変えているそうです。

 この話を聞いて感じるのは、コープでは「一人一人の暮らし方に合った住まいづくり」という考え方でその人に合った家づくりを建築士とともに進めるという活動をすでに20数年前から行ってきていました。

 設計と施工を分離して、建築士と直接住まいづくりをおよそ半年くらいじっくり時間をかけて考え、本当に必要な事を住まいに取り入れ結果的にコストパフォーマンスの良いデザインされた住まいづくりを提案するというものです。

 また作り手の都合で家を作るのではなく、今でいうシックハウスの問題ですが、これが法律化される前から「住まいから化学物質を遠ざける」として防腐防蟻剤散布を点検システムに切り替えて散布しないようにしたり、自然素材の無垢板のフローリングを使用する。塗りにくいけど天然成分の塗料を使う。など。
 
 もちろん建物の性能では早くから性能表示制度を研究し、現在の長期優良住宅に対応する家づくりも行っています。

 今回の清水先生のお話から感じるのは、コープの住まいづくり(家づくりと言わないのは物を売るだけではないということで)は時代がやっと追いついたのではとも思います。

 それじゃもっとコープスタイルは流行るのではということですが、そこはコープさんです。過度な営業はしません。あくまでも組合員さんが望まないといけないのです。その知らせる活動が過度にならないのって意外にバランスが難しいようです。
 
 良いものも知らなければ広まらないとも言います。ハウスメーカーさんのように派手に宣伝できませんので、地道にお知らせする事が大切でしょうか。


 
 
posted by 川島勝久 at 10:55| Comment(0) | 学ぶ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月12日

きちんとメーカーには確認しよう

ある外壁材の納まりが判らなかったので、メーカーに確認しました。

 建材には施工マニュアルというのがあって、メーカーが勧める納まりがあります。ただ、全てが網羅されている訳ではなく、意外に知りたい所がありません。

 個人的な直感でこれはこう納めないとだめだよなと思う訳ですが、納まりに必要な色んな役物(部品)もあるのですが、思ったものはない。やはりメーカーの意見も聞いた方がよいので、聞いてみました。

 ちゃんとお客様相談室なるものがあるんですよね。時間が遅かったので、まずはメールで内容を問い合わせます。翌日には直接電話があり、丁寧に説明していただきました。

 内容は私が思っていたのと同じでした。ただ、それに対応する役物(部品)はなく現場施工との事。

 調べておいてよかったと思います。今はメーカーの揃える役物と施工マニュアルだけで工事をしようとする業者もみえます。そうすると予想外の納まりの時に困惑するようです。(マニュアル社会の弊害ですかね?あるいは手作りの家づくりが減った為でしょうか)

 設計者はそのような時に納まりを検討して、問題のないように指示しなければいけません。(でも下請けの設計者ではそこまで検討するのは無理かもです。なので施工者さんの技術力が重要になります。)

 設計と施工を分離してしっかり設計事務所に設計と監理をしてもらうのが、一番ですが、そうでない場合は良い業者探しが良い家をつくる鍵になるようです。

 ただ、良い業者って見た目だけではわからないんですよね。困ったもんです。

posted by 川島勝久 at 14:07| Comment(0) | 家づくり豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月03日

登録文化財保存活用シンポジウム

今年初めての記事です。

 長期優良住宅認定関係の書類提出の為、色々と重なってしまい、年末年始忙しくしていましたので、更新できませんでした。反省です。

 さて、先日、愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会(略称:愛知登文会)さんの登録文化財の保存活用シンポジウムに参加しました。

 プログラムは
1。群馬からの報告「ノコギリ屋根を活かしたまちづくり」講師:群馬登文協会長 北川紘一郎氏(無鄰館館 長、桐生ユネスコ協会、桐生・世界遺産の会会長)
2。「登録有形文化財の保存活用をめぐる状況」講師:文化庁文化財調査官 金井健氏
3。意見交換

 群馬の北川氏のお話は同じノコギリ屋根の多い一宮市民としては非常に興味深いお話でした。

「富岡製糸場」がユネスコ世界遺産になった事はみなさん記憶に新しいと思いますが、そこに行き着くまでには色々とあったそうです。

 まず1990年に桐生市文化財保護課職員の方の勇敢な行動と文化庁の理解により全国近代化遺産総合調査が行われた事は画期的であった事だそうです。
 その調査の中で群馬県ではノコギリ屋根建造物が約315棟、蔵約300棟、その他産業遺産を改めて確認されたそうです。つまり、群馬県内の絹産業遺産が宝の山であったことが再確認されました。

 1992年「桐生の街づくりフォーラム」が開催されました。そこでの村松先生のお話が今も生きていると言われます。それは「文化財の保存は難しいので、活用すれば良い」と言われた事だそうです。

 今でこそ文化財の活用と言われますが、当時では文化財といえば、大切に保存して歴史資料として展示公開するものという認識しかなかったそうです。
 ところが今では文化財建造物の多様化で国宝や重要文化財から登録有形文化財や伝統的建造物群もあります。また時代も近代、現代の建造物などや新たな価値を見つけ出して様々な文化財が存在します。
 ノコギリ屋根を保存だけしようとしても無理がありますが、新たな価値を創造して活用する事で生まれ変わるという事と思います。

 一宮市のノコギリ屋根の工場をみても現役の工場として稼働しているところもあれば、中の機械はすでになく物置になっている所や、住居として利用していたり、屋根や外壁が崩れて廃墟となっていたりと様々です。すでに解体されて別の建物が建っているところもあります。いずれにせよ活用される事無く、解体される運命を待つ物が多いと思います。

 北川氏のノコギリ屋根の活用はまちづくりを基本にしながら先進国としての活用ということで、クリエーターズバレー構想を展開しようとされたそうです。
 無鄰館ではクリエーター誘致を行い、アトリエとして造形家や画家のみなさんに利用してもらったそうです。

 文化財的価値の高い建造物を保存していくには活用しかないですが、この活用が難しいです。簡単に「古民家カフェ」や「古民家のゲストハウス」と考えがちですが、その建造物の建っている場所等のポテンシャルを検討しながら、建造物の強みを活かした活用を考えなくてはいけません。また改修保全だけでも資金が必要ですし、活用の為の改修にもお金がかかります。投資コストの回収ができる収支でなければ絵に描いた餅です。
 
 まだまだ勉強が足りんなあと思わせられる一日でした。
posted by 川島勝久 at 15:18| Comment(0) | ヘリテージマネージャー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする